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日本蒙昧前史 /磯﨑憲一郎

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≪商品情報≫

著者名:磯﨑憲一郎
出版社名:文藝春秋
発行年月:2020年06月
判型:四六判
ISBN:9784163912271


≪内容情報≫

第56回谷崎潤一郎賞受賞作!
「文學界」連載中より話題を呼んだ、芥川賞作家・磯﨑憲一郎の3年振りとなる長篇小説。
「もちろんこの頃既に、人々は同質性と浅ましさに蝕まれつつはあったが、後の時代ほど絶望的に愚かではなかった」――大阪万博、三島由紀夫の自決、日本で初めての五つ子の誕生、ロッキード事件、グリコ・森永事件、日航ジャンボ機墜落事故……この国の戦後史を賑やかした大小さまざまな事件を扱いながら、作家は自由自在に語り手を乗り換えて、どこまでも遠くに語りを滑らせていく。誘拐された製菓会社の社長、キャバレー通いが趣味である小柄な政治家、五つ子の父親となったNHK局員、太陽の搭の「黄金の顔」に立てこもってしまう目玉男、グアム島の洞窟に28年間身を潜めていた元日本兵……一瞬は「時の人」に押し出されたこともある彼ら多くの語り部を通して描かれるのは、1965年生まれの作者にとっても切実な時代の、ノスタルジーによる美化を排した淡々としながらも緻密な細部である。そうして、彼等、語り手から「世の中の興味関心が薄れ、忘れ去られた後でも、虚構ではない人生は途切れることなく続いている」のだ。
――思い出してみればみるほど、じっさい酷い時代だったのだ、この時代の人々が果報に恵まれていたなどというのも、本当かどうか怪しいものだ(中略)我々は滅びゆく国に生きている、そしていつでも我々は、その渦中にあるときには何が起こっているかを知らず、過ぎ去った後になって初めてその出来事の意味を知る――
あの「蒙昧」の時代の生々しい空気と、そこに無数に鏤められた細やかだが「虚構ではない人生」を浮かび上がらせるとともに、文体の超絶技巧で高度な純文学的達成をも果たした野心作。

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