スタジオジブリの想像力 地平線とは何か /三浦雅士

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≪商品情報≫

著者名:三浦雅士
出版社名:講談社
発行年月:2021年08月
判型:四六判
ISBN:9784065241325


≪内容情報≫

……アニメーションの魅力を全面的に開花させたのが、高畑勲さん、宮崎駿さん(以下敬称略)といった人々によって担われたスタジオジブリの作品群であったと、私は考えています。高畑や宮崎といった作り手の仕事の素晴らしさについて私はこれからお話ししたいと思っているわけですが、そのためにはまずアニメーションそのものの魅力について語る必要があります。
(中略)
ルネサンス絵画の本質はアニメだということです。
ボッティチェリの『春』でも『ヴィーナスの誕生』でもいい。たくさんあるラファエロの聖母子像でも『アテネの学堂』でもいい。登場人物はすべて動き出そうとしている。静止画でさえ、いまにも瞬きしようとしている。これはもう、ルネサンス絵画の本質というよりは西洋絵画の本質で、ボッティチェリだろうがラファエロだろうが、レオナルドだろうがミケランジェロだろうが、さらには時代下ってカラヴァッジョだろうが、あるいはレンブラントだろうがフェルメールだろうが、すべてそうです。
ということは、彼らの絵をもとにしてアニメが作れるように出来ているということです。原画もキャラクターも台本も全部そろっている。ボッティチェリ作画、高畑勲監督『春』なんてことがありえたということです。それこそが、イタリア・ルネサンスの魅力の核心であると考えたほうが、よほど分かりが早い。実際、コマーシャル・フィルムなどで、そういうことを試みている例ーーたとえば優しくウィンクする『モナ・リザ』ーーが少なくないわけですが、コンピュータ・グラフィクスの驚異的な発展がこれからどんなことを可能にするか、空恐ろしいほどです。ルネサンス絵画のすべてが動き出すことになるかもしれないわけですから。
(中略)
……その眼で眺め直してみると、ゴンブリッチが援用したジェームズ・J・ギブソンの知覚論や、ルドルフ・アルンハイムの視覚論、エルンスト・クリスのカリカチュア論を含む精神分析的美術論などが、アニメーション探究に役立たないはずがありません。漫画論ーーとりわけ少女漫画論、劇画論ーーについてはもちろんのことです。
西洋ルネサンスとアニメ・ルネサンスを雁行する視覚芸術史上の事件として眺めるというこの考え方は、さらにいろいろ興味深い示唆を含みます。たとえば前者においてはキリスト教が占めた位置を後者においてはエコロジー(生態学)信仰が占めています。終末論として似ているのです。
高畑の作品も宮崎の作品も、大略、このような視点から眺められなければならないと私は思っていますが、しかしそれだけではもちろんありません。
(第一章「絵より先にアニメがあった」より抜萃)

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